プレゼント強奪作戦










まだ眠気を纏う重い瞼を押し上げ、ジンは目を覚ます。仕事で帰りが遅いことが多く、どうしても朝がつらいのだ。それでも目覚ましに叩き起こされる形で、早い時間帯にきちんと起きている。
そんな低血圧なジンが、今日に限って何故か自然と目を覚ました。時計が鳴り響く前に、だ。
今日が休日ということもあって、寝る前にいつもの起床時間より1時間遅くセットしたが、それでも鳴らないうちに目が覚めることは滅多にない。
混濁とした意識の中で自分でも訳が分からないまま、眉間にシワを寄せたジンは、ぼんやりと視界に映る黒い影を見上げた。
「おや。おはようございます、少佐」
「……ッ!!?」
のんびりと挨拶する声と、自分に覆い被さるように顔を近付ける男に気付き、眼を剥く。
事態が全く理解できない。今自分はベッドで寝ていて、ここは自分の家で、今日は休日で……合っているはずなのだが。これは一体どういうことだ。夢なのか?
どうして、ハザマが自分の上に乗っかって挨拶している?
完全に思考がこんがらがり、ジンは視線を右往左往させながら、呆然とハザマを見上げることしか出来なかった。しかしそんな状態のこちらに構うことなく、ハザマは少し残念そうな顔をして見せる。
「惜しいですねぇ~。なんでいつも起きてしまうんです? 折角イタズラしようと思ったのに」
さらりと不穏なことを宣うハザマに、ジンはもはや言葉もない。
何考えてるんだコイツ。というかコイツは一体何なんだ。神出鬼没にも程があるだろう。
どうやらこの事態、夢ではないらしい。自分を跨ぐ形で乗っかるハザマの体温が、シーツ越しに伝わってきていた。そして全体重ではないが、幾らか重みを掛けられている下半身が圧迫されている。どうやらこれのせいで、寝汚い自分が自然と目を覚ましたようだ。
多少頭が冴えてきたジンは、冷静に現状を把握していきながらへらへら笑う顔をじと目で見つめた。
「何故、僕の家が分かった」
「なんでって、名簿見れば書いてあるじゃないですかぁ~。しかも社員寮だから、本部と近いですし」
「……どこから入った」
「もちろん玄関ですよォ。警備もろくにない、鍵も単純ときては、無防備過ぎる設備だとは思いますけどねぇ~」
平然と不法侵入したことを明かすハザマに、ジンは頭が痛くなってくる。本当にこの男、何が楽しくて休日に上司の自宅へ忍び込むのだろうか。
というか、こんな風に跨がられている状況、どう考えても上司だとは思われていない。確かに直属ではないが、一応階級はハザマより上のはずなのだが。
少し前に嫌いではないかもしれないと思ったのだが、思いっ切り気のせいだった。こんな馬鹿な奴、死んでくれて一向に構わない。
「……もう貴様、死ね」
怒りが先立ってきたジンは、シーツから腕を伸ばして勢いよく二本の指を突き出した。それは狙い違わず、ハザマの細い眼にプスリと刺さる。
「痛ァーッ!?」
驚きと激痛で、ハザマが悲鳴をあげた。あんな細い眼でも、刺さることは刺さるらしい。目を抑えてのけ反る姿を見上げながら、ジンはざまぁみろと胸中で呟いた。
「この際、不法侵入は不問にしてやる。だから、さっさと出ていけ」
不機嫌最高潮で吐き捨てると、ジンはのしかかるハザマの両膝の間から足を抜き、ベッドから身軽に飛び降りた。密着していては、何をされるか分かったものではない。
しかし、距離を取ろうと三歩進んだところで、ジンは背後からタックル紛いの抱擁を受けてよろめいた。
「酷いじゃないですか~少佐ぁ?」
「ぅあッ!? 貴様、もう……ひゃっ!」
早々に復帰したハザマに張り付かれ、ジンは悲鳴をあげた。そして妖しい手つきで腰と腹を撫で回されて、悪寒が走る。やはりこの細目では、目潰しがあまり効かなかったようだ。
今度は肘鉄でも喰らわせてやろうと腕を振り上げかけた瞬間、悪戯な手が服の中へと滑り込んできて、ジンはビクリと体を跳ねさせた。
「少佐って寝る時はスウェットなんですね~。お陰で手が入れやすいですよ」
「い、入れるな馬鹿ッ! 貴様ホントに、何がしたいんだっ」
「お肌スベスベですねぇ。いや~若いっていいです」
「いい加減やめ……ぁぅ…ッ」
スルスルと蛇でも入り込むように、ハザマの手が胸元まで滑っていく。他人の手に撫で回される感触に、ジンは怒鳴ろうとした声を呆気なく折られた。もう片方の手が腰骨を撫で、スラックスをずり下げていくのを上から押さえ付けるが、あまり妨げになっていない。
なんとか腕を外そうと爪を立てるジンを嘲るように、ハザマは耳裏に唇を当ててくすくす笑った。
「少佐がいけないんですよォ? あんな酷い暴力振るったりするから」
「! どっちが…ッ! 勝手に入ってきておいて!」
よくもいけしゃあしゃあと……!
厚かましいハザマの態度に怒りを覚えながらも、動きが読まれているかのように、攻撃しようとした腕を掴まれてしまう。
思わずジンが肩越しに振り返って睨むと、至近距離で笑うハザマが、捕らえたジンの手にチュッと音を立てて口づけた。まるで女性にするような、そんな仕草に頬が熱くなる。好き勝手に体を触られていることよりもそういう行動の方が、なんとも言えない恥ずかしさが込み上げた。
怒りと羞恥をないまぜにして、ジンが唇を噛み締めて睨むと、ハザマは不意に苦笑を浮かべた。
「まさか、今日に限って少佐がお休みだなんて思わなかったものでねぇ~。お陰で有休取ってまで来ちゃいましたよぉ?」
「……? なんだ、今日は何かあったか?」
少し勿体ぶった言い方をするハザマに、ジンは片眉を跳ね上げる。やり残した仕事でもあっただろうかと思わず考えたが、その思考を読んだようにハザマが、違いますよと囁いた。
じゃあ何なんだと視線で問うと、満面の笑みで迎えられる。胡散臭いほど爽やかなその笑みに、なんだか嫌な予感を覚えた。
「今日は私の誕生日なんですよ! もちろん祝ってくれますよね、少佐♪」
「……」
告げられた言葉はあまりに予想外で、一瞬意味が分からなかった。
誕生日? それが上司であるはずの自分が、朝から不法侵入とセクハラを受ける理由になるというのか?
――否。
ジンは肺の奥まで息を吸い込み、両腕を引き絞った。握った拳がミシリと軋むほどに、力を入れる。
「ふざけるな貴様ァーッ!!」
「ゲファッ!?」
怒号と共に放った両腕の肘鉄が、ハザマの脇腹に見事ダブルヒットした。










「……いかんな、怒りに任せて無駄な時間と労力を使ってしまった。全く以って無意味だった」
大仰に溜息をつき、ジンは頭を振った。いい加減、自分も疲れてきたので固めていた拳を解く。
体から力を抜くと自然と重心が片膝に掛かり、足元から呻き声があがった。
「こ……ここまでやっておいて、そんな言葉で…済ますんですか…?」
「なんだ、まだ足りないのか? 望みとあらば、もっと踏み付けてやるぞ屑が」
「痛たたたっ! いや、あのすみません、カカトに体重かけないでッ! 背骨折れちゃいますから~!」
ハザマの背を踏み付けていた足に力を入れると、悲鳴があがった。多少軋むような音はするが、ヒールでないだけまだマシだ。
しかし素足のままだったことに改めて気を留め、ジンは踏み付けていた足を退けた。
「いつまでもこんなことしてる場合じゃないな。貴様は早く出ていけ、僕は着替える」
「あ、では着替えのお手伝いをし――げふッ」
「学習能力がないのか、貴様は」
また馬鹿げた発言をするハザマに、ジンは条件反射で一発蹴りを叩き込んだ。激痛に芋虫の如くのたうつハザマに頓着せず、ジンはスーツの衿を掴んでドアの方へと引きずっていく。
やめて首が絞まります、と呻くのも無視してジンはハザマをドアの向こうへ放り出すと、しっかり施錠した。
「さっさと帰れ。いいな!?」
念を押すように、ジンはドアに向かって怒鳴り付ける。呻き声だけで明確な返事はなかったが、ジンは背を向けてクローゼットに近付いた。
折角の休日だというのに、なんでこんなことになっているのだ。溜息をつきながら、ジンは上着を脱いでシャツを身につけた。
誕生日だとか言っていたが、何故僕のところへ来る? 普通は家族や恋人、友達と祝うものじゃないのか?
着替えながら疑問を浮かべるジンだったが、それはあくまで一般的なことであり自分には該当しないので、本当の『普通』がどうであるかは分からなかった。
キサラギ家の養子に入り、次期当主と囁かれながらも、ジンは他の兄弟や縁戚とあまり親しくなく、誕生日を祝われたことがない。大抵、過ぎてしまってから自分の誕生日だったことを思い出すのだ。その為、稀に自分の年齢さえ曖昧になることもあった。
祝われたことのある記憶は、兄と妹とシスターと暮らしていた頃と、士官学校時代にツバキからプレゼントを貰ったことくらいだ。
その時に嬉しくなかったかと言えば嘘になるが、だからといって祝ってほしいと思うほどのことでもなかった。どんな日であろうと、一日は結局ただの一日に過ぎないのだ。
しかしそれを言ったところで、誕生日という理由だけで押しかけてきた男を納得させるのは難しいだろう。無理矢理隣の部屋に放り出したが、そう簡単に引き下がるとも思っていない。……かなり痛め付けたので、流石に帰った可能性もないことはないが。
一応ユキアネサは使わずに拳と蹴りだけだったので、致命傷ではないはずだ…などと、今更少し安否が気になり、ジンはブーツを履き終えてからドアの鍵を外した。
そして隣の部屋へて入って早速、心配したこと自体が馬鹿な行為だったと気付く。
「ハザマ大尉……勝手に冷蔵庫を漁るな」
「朝食、作って差し上げた方が良いかと思いまして~」
思わず半眼でなって呻くジンに、ハザマは悪びれた様子もなく冷蔵庫を覗き込みながら返事をした。上着と帽子を椅子に掛け、卵やレタスを取り出している様が、まるで出勤前のサラリーマンだ。最初からここに住んでいるかのような溶け込み具合に、ジンは怒りを通り越して呆れた。
もう先程散々暴れたので、もはやどうこうする気力は残っていない。溜め息をつきながら、ジンはハザマに近付いた。
「大尉、朝食は摂ったのか」
「いや~それが、有休の申請してから慌ててこっちに来たので、実はまだなんですよ」
一緒に頂いてもいいですか?
少し困ったように笑みを浮かべながらそんな風に聞くものだから、駄目だとは言えず。ジンは冷蔵庫の奥からトマトと玉葱を取り出し、ハザマの手からレタスを取り上げた。
「大尉は座って待っていろ。トーストとサラダくらいしかないが、それでいいなら用意する」
「……え、少佐が作ってくれるんですか?」
「味の保障はしないがな」
意外そうにこちらを見るハザマに、ジンはわざと人の悪い笑みを浮かべて見せる。不安がよぎったのだろう、ハザマの口元が少し引き攣った。
別に変なものを入れるつもりも、料理オンチなわけでもないが、独り身の我流料理だ。自分が美味しいと思えば正解になってしまうので、他人が食べてどう思うかは分からない。
しかし今はトーストを焼いてサラダを作るだけだ。マズイものにはなりようがなかった。
社員寮故の狭いキッチンに立ち、ジンは材料を置いて手を洗った。そういえば顔も洗ってないなと思い出すが、とりあえず朝食をハザマに出してからにするかと、後回しにする。
「少佐、お鍋を一つ借りてもいいですか?」
「別に構わないが……何か作るのか?」
座っているように指示したはずのハザマが、卵のパックを片手にそんなことを聞いてきたので、ジンは首を傾げながらも棚から小鍋を取り出した。これでいいかと問いながら渡すと、有難うございますと満面の笑みで礼を言われた。
「私、ゆで卵が好きなんですよぉ~。これを食べないと、一日が始まらなくって」
嬉しそうに卵をつまみながら、ハザマがそんなことを言う。鍋を欲しがったのは、なるほど茹でる為かと納得するが、随分変わった嗜好だなと失礼なことを考えた。
卵料理は人気が高いが、オムレツなどフワフワした食感を好む場合が多い。あるいはプリンやカスタードなど、お菓子として好きだという場合もあるだろう。そこを敢えて茹で卵に限定している辺りが、ジンには不思議な感覚だった。
鼻歌でも歌い出しそうなほど上機嫌で水を入れた鍋を火に掛けるハザマを横目で見ながら、ジンはトースターに食パンを放り込んだ。
「茹で卵って、パサパサしていないか?」
「固茹でなら、確かにそうですね。でも、ちょ~どいい具合に半熟に茹でると美味しいんですよぉ? 少佐も食べてみます?」
「いや、僕は別に……」
「まあまあそう言わず。少佐の分も入れておきますね」
断ったのだが無視され、卵を一つ足されてしまった。人の話を聞けコイツと思ったが、楽しそうにスプーンで卵を転がす姿を見ると何だが毒気が抜かれてしまい、まあいいかという気にさせられる。
これだけ厚かましく人の生活圏に侵入しているというのに、結局存在を受け入れてしまうのは、ハザマのこういうところに惹かれているのかもしれない、とジンはふと思った。相手をするのが面倒臭いのだが、楽しそうにしている雰囲気が傍にいて心地いいのだ。自分自身があまり明るい性格でないと分かっているだけに、自分に無い要素に魅力を感じるのだろう。
持ち合わせていないから、羨ましい。そういうことだ、別にこの男を全面肯定しているわけじゃない。分析しながら、ジンはそう自分に言い聞かせるように胸中で呟いた。
しかしそうして思考が逸れたままトマトを切っていたジンは、手元が疎かになっていた。
「……っ」
すぐに手を離したが、親指を浅く切っていた。普段ならこんな失敗しないのに、と自分に苛立ちながらジンは手を洗おうとしたところ、目敏い男に腕を掴まれてしまう。
「! おいっ!?」
そして抗う間もなく手を持って行かれ、傷口を舐められた。ぬるりとした感触に驚いてハザマを見ると、ジンの親指に紅い舌を絡ませながら、嬉しそうに笑っていた。
「少佐の血、なんだか甘い気がしますねェ……」
色素の薄い、金色のような瞳が三日月に歪むその眼から覗いた。それを見た瞬間ぞくりと肌が粟立つような悪寒が駆け抜け、ジンは思わず息を呑む。ちろちろと舌を這わせて笑うその表情が、捕食者めいていると思った。
思わずジンが振り払うように手を引き戻すと、ハザマは思い出したようにいつもの胡散臭い笑みを浮かべて見せた。
「消毒ですよ、消毒♪ 少佐の手に傷なんか残ったら大変ですからね」
「……余計な世話だ」
おどけたように言うハザマを、ジンは眉間に皺を寄せながら睨む。手を切ったのは自分の不注意だが、舐めるのはやり過ぎだ。
蛇口を思い切り捻り、ジンは生暖かい感触を洗い落とすように傷口を擦った。








「やっぱりこれですよね~。どうです? 美味しいでしょう?」
「……マズくはない」
食卓に着いてから、ハザマは饒舌に喋り通しだった。
ただのトーストにドレッシングをかけただけのサラダ、そして茹で卵。こんな何の変哲もない質素な朝食に、よくそこまでテンションが上がるなと不思議に思ってしまうくらい、美味しいですねと繰り返していた。
誰が焼こうがトーストはトースト。ドレッシングをかければ大抵の野菜は食べられる。普段の外食とは比べものならないそれらを、嬉しそうに頬張る心境はジンには理解できなかったが、確かにハザマが作った茹で卵は程よく半熟でしっとりしていた。
「2つ目、食べます?」
「いや、いい」
綺麗に剥かれた真っ白な卵を差し出して、ハザマがにこにこと笑いかける。笑顔の圧力に押されかけながら、ジンは首を横に振った。それなりに美味しいのは認めるが、流石に何個も食べたいと思うものではない。
断ると残念そうにハザマは眉根を下げ、差し出していた卵を自分の口元に持っていった。既に二個は平らげていたので、三個目だろう。ぱくぱくと簡単に食べてしまう姿には感心するが、コレステロール値が跳ね上がりそうだなと思った。
「……ところで、少佐。誕生日の件ですが」
「ん?」
あらかた食べ終わり、紅茶を啜っていたところで、ハザマがまたもや誕生日の話を振ってきた。嫌な予感に眉をひそめてハザマの顔を見ると、胡散臭いほど爽やかな笑みを浮かべて両手を差し出してきた。
「何かプレゼントください☆」
「……貴様、これ以上何をたかる気だァ!?」
厚顔無恥も甚だしい発言に、ジンはマグカップをテーブルに叩き付けた。
不法侵入した輩に朝食を出すという寛大さを披露したというのに、この男は……!
制裁を加えたことは棚に上げ、ジンはハザマを思い切り睨みつける。
「もう十分、相手をしてやっただろう! これ以上何が欲しいんだ、貴様」
「形に残るものであれば、何でもいいですよォ~。少佐から貰ったってことが、嬉しいんですから」
怒鳴り付けたというのに、返ってきたのは驚くほど柔らかい笑みだった。予想外の言葉に、思わず呆気に取られて、瞬きをする。
何を言ってるんだ、コイツ……?
まるで家族か恋人にでも言うような台詞に、ジンは思考が混乱した。
どういう意味で言ったのだろうか。この男のことだ、文面通りというわけではあるまい。……いや、そのままの意味なのだろうか?
勘繰るべきか素直に聞くべきか判断に迷っていると、ハザマが御馳走様でしたと言って立ち上がった。帽子とコートを手に取り、いつものように身に纏うのを見て、ジンは戸惑う。
「多忙な少佐の休みを、あまり削ってしまうのは気が引けますので、この辺りでお暇させて頂きますね~」
「え……」
急に帰り支度を始めたハザマの行動が理解できず、ジンは腰を浮かしかけた。中途半端に話を振られて、一方的に打ち切られては気持ち悪くて仕方ない。
しかし出口へ向かいかけたハザマが振り返り、微笑みながら言った言葉に、話は終わっていなかったのだと思い知らされた。
「では明日、また本部で会いましょう。……あ、ちなみに余談ですが、シルバーアクセサリーが好きなんですよ私」
……それは、プレゼントに寄越せという意味か!?
遠回しに要求してきたハザマに、ジンは顔を引き攣らせるしかなかった。












翌日、昼食を誘いに来たハザマに、ジンは小さなシルバーチャームを投げて寄越した。
なんで僕がこんなこと……と苛立つ気持ちも強かったが、プレゼントを受け取ったハザマの顔が引き攣ったのを見て、少し気分が晴れた。
デスクに肘を付いたまま、ジンは停止しているハザマを横目で見る。
「誕生日オメデトウ、ハザマ大尉」
「少佐……」
棒読みの祝いの言葉を口にするが、ハザマは困り顔で手元に視線を落としていた。
そこには、よく磨かれた可愛い猫のシルバーチャームがあった……。




END





ギリギリ、ハザマ誕生日祝い。
半ばカツアゲ。