昼間は青く晴れ渡っていた空はいつの間にかすっかり暗くなり、深みのある紺のヴェールに包み込まれていた。その、きりりと神経が研ぎ澄まされる静けさの中に柔らかな明かりがぽつりぽつりと灯される。伝統を色濃く残す木造の建物は光と影の狭間に浮かび上がり、不可思議な暖かみと安心感を見る者に与えた。
豊かな緑に囲まれたこの地は、かつてギアに消滅させられた日本列島を模して作られたコロニー。保護動物扱いの日本人がすべて収容されている、少々特殊な場所である。
素朴な石畳みが敷かれた道をカラコロと音を立てて歩きながら、カイはその異文化を堪能していた。既に祭りが始まって賑やかさを増しているその場は、多くの出店とそれを見て回る人々のはしゃぐ声で満ちている。それぞれに見目豊かな浴衣を着て、多くの日本人が行き交っている中、カイは星が降ってきそうな壮大な空を見上げ、近くに流れる小川のせせらぎに耳を澄ませた。幸せそうに笑う人々の声も暖かくて心地好いが、こうした自然の音に思いを馳せるのもまた良い。
しかし、幸せな気分に浸るカイの頭を、後ろの人物は容赦なくこづいた。
「なにアホ面晒して突っ立ってんだ」
「……お前はデリカシーに欠ける」
僅かに自分より高い位置から発せられた低い声に、カイは不機嫌を露にして徐に後ろへ振り返った。
そこには深い紅色の浴衣を着た巨漢がいた。茶髪に不自然なヘッドギアをつけ、ひと睨みで相手をびびらせられるような強面の顔を持つその男は、口端からフランクフルトの棒を覗かせながら、こちらを呆れたように見つめている。怖いのか間抜けなのか少々判断がつかない出で立ちであった。もちろんそれを見たカイは、正直そのいずれの感想も抱かなかったが。
なぜかよく顔を突き合わせるこの男は、ソル=バッドガイ。意味を訳すと太陽悪男。こちらが勝負を仕掛ければ行方をくらませ、邪魔だと思っているときに現れる天の邪鬼。何かと妙に縁の多い男である。
そう言えば、こいつの大飯食らいがここへ訪れるきっかけだったのだと、カイはふと思い出す。たまたま日が沈む前に仕事を終えて帰ってきたカイの家に、なぜかこの男が居座っていて、あまつさえストックしていた食料をすべて食べ尽くしていたのがまずケンカの発端だった。怒ったカイと、まだそれでも腹が満たされていなかったらしいソルが白熱バトルを繰り広げているそんな真最中に、たまたま訪ねてきた闇慈が『ちょうどコロニーで夏祭りをやってるから、そこで腹ごなししないか』と持ち掛けてきたことでとりあえず丸く収まり、こうしてコロニーへと足を運んだのである。
もともと日本の文化に興味のあったカイは怒りも忘れてその誘いに乗り、あまり興味無さげで嫌がるソルを無理矢理引っ張ってここまで来たが、やはり置いてくれば良かっただろうかなどと考えながら、カイはふつふつと沸き起こってきた怒りに任せて、ソルの足を蹴った。カイは闇慈が用意してくれた浴衣に身を包んでいたため、淡い蒼に蝶を描いた裾から細い足が覗き、履いていた下駄がソルの臑にスコーンと命中する。
「……てッ! 何しやがるっ」
「腹いせ。食料全部駄目にされたからな」
「んだと? あんなんで足りるかッ!」
「人のもの食べておいて逆ギレとはなんだッ!!」
ふざけたことをぬかすソルに鉄鎚を下そうとカイが再び足で上げると、逆にその足をぐわしと掴まれてしまった。
「は、放せっ」
「ふん。二度も喰らうわけねぇだろ」
カイの細い太股を捕らえて、ソルは焦るカイにニヤリと笑ってみせる。良くないことを考えているときの笑みだ。
何か危険を感じたカイが咄嗟に蹴り飛ばそうとするより一瞬早く、ソルがそのまま手を滑らせて足の付け根まで触れてきた。
「!!!」
「なんだ、下は女物じゃねぇのか」
そのゾクッとする感触に身を硬直させたカイは、ソルの手が裾を割って中でさわさわと動く感触に、羞恥と怒りで顔を真っ赤にした。
「きーさーまーはぁぁッッ!!」
「おっと」
カイはソルの顎目掛けて思い切り足を蹴り上げたが、ソルに難なくかわされてしまった。足を高く上げたことで大きく開いた裾から覗いた白く長い生足に他の通行人がぎょっとなって立ち止まる。その視線に気付き、カイは慌てて服装を直した。
「おやおや、サービス満点だな。カイ殿」
カイの様子に意地悪く笑っていたソルの後ろからひょっこり現れた闇慈が、口許に扇子を当ててさらりと感想を述べる。闇慈はいつもの上半身裸の格好ではなく、紺と白を基調にした礼服のような着物を綺麗に着こなし、帯には金を所々にあしらった深紅の生地のものを使っていた。
カイは闇慈の存在に気付き、動揺しつつもにこりと微笑む。
「もう、お知り合いとの挨拶はよろしいんですか?」
「ん。ああ、別にそんな大層なものじゃないから、顔を出してきただけさ。とりあえず生きてることは知らせとかねぇとな」
なんでもないことのように軽い調子で闇慈は言った。自分が逃亡中の身であることを自覚しているのいないのか。
コロニーは普段から厳重な結界が張られており、一般人はおろか警察機構の人間でもおいそれとは入れない。そして外部から入れないことに加えて、内部にいる日本人も滅多に外へと出られない。保護という名の牢獄である。
しかしそんな監視の厳しいところであっても、文化保護という名目の前では監視を甘くせざるをえなかった。日本の文化は元が島国で生まれたこともあって、大陸文化に融合せずに独特の文化形態を形成した。その日本古来の独自の文化を失わないため、そして多くの人に知ってもらうため、特別にコロニーの一部を開放することがあるのである。今回は祭りということで誰でも入ることができるようにされていた。もっとも、入るときの検査は非常に厳しいのだが。
何か起こったときのために配置されている警察も多いということもあって、カイは少し闇慈が心配だった。逃亡中のジャパニーズとバレては、無理矢理連行されかねない。
なのに闇慈は瓢々とした様子でカイを眺めている。
「カイ殿はやっぱり何を着ても似合うなぁ。その浴衣も俺が見立てた通りバッチリだ」
「そ、そうですか? フランス人の私が着てもおかしいんじゃないかと思ってたのですが……」
「いやいや、ホント似合ってるって。なあ、ソルの旦那」
闇慈からの不意な褒め言葉に、カイは照れつつも困ったように曖昧な笑みを返した。とても綺麗な浴衣を着させてもらっただけに、自分には勿体ないのではないかと思っていたからだ。
話を振られたソルは口にくわえたままの串を上下させながら、困惑しているカイをじっと見つめた。
「……どうでもいいが、なんでこいつ女物なんか着――」
「やっぱりアンタも似合ってるって思うだろッ!? 元がいいから余計に浴衣が映えるんだよなあ〜!!」
「……え?」
ソルが言おうとしたことを強引に打ち消すかたちで闇慈が大声で叫んだ。不可解なその行動にカイは眉を寄せて疑問符を浮かべる。
言葉を遮られたソルは何か言いたそうに闇慈をちらりと見たが、闇慈が困ったように笑いながら「この方が面白いだろ?」と言うと、ソルは口端をくっと上げて「確かにな」と言って笑った。その二人の様子を見ていたカイは胡乱げな目付きで二人を睨付けた。
「何か私に隠してますね?」
「いやいやいやっ。そんなことは決してないともッ」
闇慈は慌てて首を横に振って否定するが、その目はどちらかというと面白がっている目で、カイには全く誠意が感じられなかった。なのでカイはにっこり笑って闇慈に詰め寄る。
「一体何を隠しているのですか? 素直に言ってくださらないと、血を見ることになりますよ?」
「警察やってる奴が言うセリフじゃねぇだろ、それ」
「ただ飯食らいが偉そうに言うな」
冷汗を流す闇慈からソルへと視線を移し、カイはじろりと睨む。女でもそうそうお目にかかれない美貌の持ち主に睨まれたところで堪えるはずもなく、ソルは怯んだ様子を全く見せなかった。それどころか馬鹿にしたような薄笑いさえ浮かべるソルに、カイはずかずかと詰め寄る。
「大体、明日の朝食はどうするんだ! サラダもパンも全部食べてしまって!」
「別に抜きでもいいんじゃねぇか」
「お前はどうかしらんが、私は明日仕事があるんだ! 食べなきゃ倒れる! 食べた分、弁償しろ!」
「なんで俺があんな鳥のエサみてぇな食いもんに金払わなきゃなんねぇんだ!?」
「あ。貴様、農家の人にすごく失礼なこと言ったな!? 侮辱罪で逮捕する!」
「なんでそうなる!!」
ぎゃーぎゃー言い合う二人を見つつ、どうしたものかと一人悩む闇慈。ただでさえ日本人でないことで目立っている二人は、それに加えて通りすがりの人が思わず振り返るような端正な容姿を持っている。それで目立たないはずがなく、そろそろ人の目を集めて始めていた。
ソルとカイの喧嘩の原因は明らかにソルに非があり、素直に謝ればそれで済むことなのだが、ソルには反省の色など全くなく、その横柄な態度で余計にカイの怒りを買っている。
さてどうしものか、と闇慈がちらりと視線を泳がせた先に、金魚すくいに興じる家族連れがいた。闇慈はふいにぽんと扇子を打ち、未だ言い争う二人に近づいた。
「勝負で決着をつけるのはどうだい?」
突然の提案だったが、ソルとカイはぴたりと静かになってこちらに振り返った。
「あぁ?」
「勝負、ですか? それはいいですね」
勝負と聞いて、ソルは顔をしかめたが、カイは活き活きと顔を輝かす。しかしそのカイもふと表情を暗くし、困ったような顔をした。
「……しかし、ここには封雷剣を持ってきませんでしたが」
「こんなところでマジバトルする気かよ、アンタはッ!」
「なんだ、違うのか。てっきり武器なしでストリートファイトすんのかと思ったぜ」
「ソルの旦那もかいッ!? 頼むから常識で考えてくれよ、常識で!」
真剣勝負と勘違いしたらしいソルとカイに、闇慈は慌てて叫ぶ。二人はしばらくきょとんとしたのち、口を揃えて言った。
「「常識で考えた結果だが」」
「……」
あー、そーだねぇー。いっつもアンタら、容赦なしのマジバトルでいがみ合ってるもんねー…。
なぜか自分が間違っているような感覚にとらわれながら、闇慈は力なく首を横に振った。
その心境に気付いた風もなく、カイはどこか幼さのある表情で首を傾げる。
「では、一体何で勝負をするというのですか?」
「ああ。もちろんあそこの金魚すくいでするんだよ」
「キンギョスクイ?」
闇慈の言葉をそのまま反芻するようにカイは呟き、目を瞬かせながら見つめ返してきた。ソルはというと、眉をひそめて闇慈がちょいちょいと扇子で指した先を見ている。そこには日本語と英語で『金魚すくい』と書かれた小さな出店があった。
つられてそちらに顔を向けたカイは、またもや首を捻る。
「勝負……というような物々しい感じはしませんが」
「頼むから、そういう物騒な考えら離れてくれないかい?」
至って真面目にそう言うカイに、闇慈は顔を引きつらせながら冷汗を流す。どうもこの二人は戦いばかりの人生を送ってきたせいで感覚が少々ズレているらしい。
「金魚すくいってのは、日本の伝統的な遊びなんだ」
「遊び…なのですか?」
「ああ、そうだよ。……って言っても結構難しいし、勝ち負けもはっきりするから、白黒つけるにはいいんじゃないかと思ってさ」
できるだけ穏便に事が済むように誘導しようと闇慈は説得する。なんであれ勝負がつけられそうだと分かってか、カイは金魚すくいに興味を抱いたようだった。
ずっと遠目でその出店を見つめていたソルが、不意に闇慈の方へ顔を向けた。
「金魚すくいってのは、あれだろ。魚を紙ですくうゲームだよな」
「おや、よく知ってるねぇ」
アメリカ人のソルが大まかにでも金魚すくいを知っていたことに驚き、闇慈は感心した。ソルの説明を同じく聞いていたカイは、不思議そうな顔をする。
「紙でそんなことができるものですか?」
「紙って言っても、丸い枠に張ったものだからペラペラじゃないさ」
「ふーん。それですくうわけですか」
「そういうこと。それで多くの金魚を獲得できた人が勝ち」
どうだ、簡単だろう?と闇慈はカイに笑いかけた。随分乗り気になったらしいカイは、楽しそうな笑みを浮かべて頷く。ソルは、別に何でもいいというような態度のまま、ふと思い出したことを呟いた。
「……ちなみに、捕った魚はもらえるらしいぜ」
「それなら明日の朝食の材料にでもしようか」
「待て待て待てッ! それは食べるもんじゃねぇ!!」
思わずぎょっとするカイの発言に、闇慈は慌てた。しかしそれをソルは不思議そうに見る。
「食用じゃねぇのか? 道理で昔の知り合いの奴がマズイマズイって言ってたわけだ」
「すでに食われてるー!? いくらなんでも金魚なんか食うなよッ!」
中国人でもないのに、なんでも食べるらしい。いや、それとももともと彼らにしたら食材なのだろうか?
混乱する闇慈を尻目に、ソルとカイは顔を見合わせる。
「調理法によっちゃあ食えるんじゃねぇか?」
「そうだな。魚臭さを消してしまえばなんとかなると思う」
「……あのさ、言っとくが、食えるサイズじゃないぜ?」
「んじゃ、太らせてから食う」
「……たぶん、その前に死ぬと思うな。弱いし」
「なんだ」
「残念ですね」
あっさりとそんな会話をする二人は、どうやら相当腹が減っているらしい。闇慈はようやく分かった。食べることからなかなか離れてくれないのは、二人がほぼ空きっ腹でいるせいだ。……多分。
とりあえず腹一杯にさせた方がいいんじゃないかと思い、闇慈はこう言ってみた。
「じゃあ、勝負で負けた方が何か食べ物をおごるってことで」
「おっしゃあぁッ! イカ焼きとお好み焼きと空揚げは俺のものだ! リッチな公務員の坊やに、給料日前の貧困さを味あわせてやるぜ!!」
「生憎だな、焼きとうもろこしとカステラとかき氷とかいう氷菓子は私のものだ! 負けて吠えヅラかくなよ、万年放浪者ッ!!」
……ビンゴのようです。っていうかアンタら、キャラ変わってませんか。
火花を散らせて白熱する二人についていけないものを感じながら、その様を傍観することしかできなくてちょっとセンチな気分になる闇慈。
その原因である二人は、さっそく金魚すくいをしようと、一ドル払って店の親父からやり方の説明を聞いていた。食べ物への執念とは恐いものである。くわばらくわばら。
……そこでようやく。闇慈は自分が火に油を注いでしまったのだという事実に気が付いた。勝負を持ち掛けたことで、おさまりかけたテンションゲージをMAXにしてしまったのだという事実に、闇慈は今更ながら深く後悔したのだった。







「……フン。俺の圧勝だな」
「何が圧勝だ。1匹の差で、そこまで威張れるか」
「全く捕まえられなかった奴が何言ってやがる。0と1じゃ全然違うんだよ」
「そんな極小の差で偉そばるな。しかもめちゃくちゃ小さい稚魚で」
「それでも勝ちは勝ちだ。約束通りおごれ」
「くっ……! 1品だけだぞ」
「じゃあ、そこのお好み焼き。10個な」
「はっ!!?」
「品数の制限はしたが、個数の制限はしなかったじゃねぇか」
「き、貴様ッッ!!」
「おら、早く行ってこい。パシリ」
「〜〜! つ、次はダーツで勝負だッ! いいな!?」
「おう、望むところだ。今度もパシらせてやるぜ」







「――なぜなんだ!」
「坊やだからさ」
「違う! 絶対違う! 全部当てるお前がおかしいッ!」
「はン。俺の運動神経ナメてんのか? ……まあ、最後の一本以外全部当てた坊やも健闘した方だが、勝負は勝負だしな。今度はイカ焼き20個だぜ」
「まだ食べたりないのか、お前は!?」
「負け犬の分際でごちゃごちゃうっせぇ。さっさと買ってこい、パシリ」
「く、くそ〜〜! 再戦を申し込むッ! 次はあのヨーヨー釣りだ!」
「何度やっても同じだぜ? ククッ」







「あ゛ー!!」
「なんか全部釣れちまったな。肝心のヨーヨーがなくちゃ何にもできねぇなぁ? 坊や」
「そんな! まだ予備がありますよね!? おじさん!」
「あ〜……悪いがネエチャン、もう予備がねぇんだ」
「!!」
「んじゃ、俺の不戦勝だな。次は空揚げ8カップ分頼むぜ」
「そんな馬鹿な! ってゆーか流石に太るぞ、お前!」
「……ほっとけ」
「次は! 次はッ!! クジで勝負だからな〜〜ッッ!(>△<)」
「クジって勝負じゃねぇだろ!( ̄□ ̄;)」







カランコローン♪
「一等です〜! おめでとう〜♪」
「んだとォッ!?」
「フッ…。当然の結果です。まあ、無駄に長く生きている貴方では運などとっくに尽き果てていて、当てることなど叶わぬ夢でしょうけれど」
「喧嘩売ってんのかてめぇ」
「いいえ。喧嘩なんて売ってませんよ? だって大事な私のパシリですし」
「ぐ……ッ!」






(この二人、放っといたら朝までやり続けるんじゃないか……?)

                                     by闇慈




      ……………。





何度目かの勝負でやっと手に入れた戦利品を、カイは大事そうに両手で持っていた。空いていたベンチに腰かけてそれを見つめていたカイは、内から込み上げる嬉しさに自然と微笑む。
「本当にそんなものでよかったのかい? カイ殿」
隣に座っていた闇慈は、どこか意外そうな表情で尋ねてきた。疑問に思う理由も分からなくはなかったが、カイは満足げに微笑んでみせた。
「今までおごらされた分を考えたら悔しい気もしますが、私にはこれで充分なんです」
手の中に収まるりんご飴を見つめ、カイはそう言った。
やっとのことで勝利を収めたソルとの勝負で、カイはりんご飴を一個だけ要求した。もともとおごるものは一品だけと決めたのは自分であるし、だからといって今までの仕返しで沢山要求してみたところで食べきれるわけもない。だからカイは、無理をせずに一個だけソルにおごらせたのだった。
りんご丸ごと一つを飴でコーティングした、その初めて目にするお菓子をまじまじ見つめがら、カイはどこからかぶりつこうか思案する。とりあえず表面の飴から剥がしていこうとカイが歯を 立てたとき、どこからともなくのそりとソルが現れた。
そういえば今までどこにいたんだろうと思いながらカリリと飴を噛むカイの目の前に、ソルは突然無言でかき氷とサイダーを突き出した。
「え……?」
目を丸くして、カイはソルを見つめ返した。
どこか不貞腐れたような表情のソルは、カイからひょいとりんご飴を取り上げると、代わりにその二つを強引に持たせてきた。
「な、なに……??」
「冷たいもんから先に食え。りんご飴は後でも問題ねぇだろ」
「えっと…いや、そうじゃなくて。これは一体、どういうことだ?」
「やるっつってんだよ。坊やがりんご飴一個でいいとかふざけたことぬかすから」
なんとも歯切れ悪くそう言うソルを、カイはきょとんとして見つめた。非常に奇怪な現象に遭遇して、脳が思考停止してしまったのだ。ついでに隣に座っている闇慈も固まっている。
「おい……?」
妙な沈黙の降りた空気に、ソルは不可解そうな様子で眉を寄せた。その表情に気付き、カイは突然せきを切ったように笑い始める。
「あははははは! ソ、ソルが気を遣ってるッ! この、なんでもかんでも適当な男が!!」
「ほんッとにどうしたんだ!? ひょっとすると天変地異でも起こるんじゃないかい??」
「あーあー、悪かったなッ! ちくしょう、もういいっ。返せッ、それ!」
カイと闇慈に盛大に笑われ、思い切りへそを曲げたソルが、カイの手からかき氷とサイダーを取り返そうとした。それに気付き、カイは不意に笑いを引っ込めて、ソルを見つめる。
「ありがとう、ソル。すごく嬉しいよ」
「……っ」
にっこりと満面の笑みを浮かべてカイが笑いかけると、ソルが不意打ちでも喰らったように驚いた顔をした。普段は無表情で、たまに表情を変えたと思ったら人を馬鹿にしたような意地の悪い笑みを浮かべるだけのような男が惚けたように表情を崩したので、カイはまたくすりと笑う。
「ご苦労さま。隣、座ったら?」
「……あ、ああ」
カイが柔らかく笑みを浮かべたまま空いている横を指すと、ソルは促されるままに座った。微妙に言いなりになっている辺りが、ソルの驚きの大きさが窺える。
手渡されたかき氷とサイダーに改めて視線を落とし、カイはとりあえずかき氷からもらうことにしようと、サイダーをすぐ脇に置いた。それを見た闇慈が、「ちょっとそれ貸してくれるか?」と言ったので、カイは首を傾げながらも手渡した。
「これな、ビー玉が蓋代わりになってるんだ。だからここをこうして……っと」
カイに見えるように闇慈がビンの上に付いていた小さな物をぐっと押し込むと、中に詰まっていたガラス玉がカチャンと音をさせてビンの底に沈んだ。次いで、そこに入っていた液体が小さな泡を無数に発生させる。
「あ、これって炭酸?」
「そう。結構おいしいぜ?」
陽気な笑み浮かべる闇慈から、カイは礼を言いつつそのサイダーを受け取った。
中に沈んだビー玉をよく見ようと覗き込むと、歪曲したエメラルド色のガラスビンを通して沢山の出店の光が美しくきらめき、滑らかなビー玉の表面により一層明るく輝いていた。それがあまりに綺麗で、カイはしばらく飽きること無く見つめていたのだが、突然ソルにそれを取り上げられた。
「飲む気ねぇなら、俺が先に飲むぜ」
「あッ!!」
サイダーを一気に煽り、ごくりと飲むソル。
楽しみにしていたものに先に手を付けられ、カイは悲壮な叫び声を上げた。すぐに怒りが込み上がってきたカイは、ソルからサイダーを取り返そうと掴み掛かる。人が情緒を楽しんでいるときにそんなことをするなど言語道断である。
しかし、バッドガイに鉄拳制裁をと思った矢先、突然ソルが思い切りむせ始めた。
「え……?」
むこうを向いてベンチに突っ伏すソルに、カイは疑問符を浮かべる。闇慈も一体何事だと言いたげにソルを見た。
アメリカ人と日本人では当然味覚が違うだろうから、もしやソルにとってサイダーはまずかったのだろうか? いや、しかし炭酸系はむしろアメリカ人の好むものではなかろうか。
ごほごほと咳き込むソルをしばらく呆然と見つめていたカイだったが、思い当たることがあって、徐にソルの手からサイダーを取って口を付けた。
「甘い……」
「? それがどうかしたかい?」
カイがぽつりと呟いた言葉に、闇慈はさらに意味が分からないといった風に聞き返した。甘いことの何がいけないのかと疑問に思う気持ちはカイもよく分かる。
実際に飲んでみたこの炭酸飲料も、普通よりは少し甘さを強めたくらいのもので、カイもおいしいと思う。けれど……。
「ソル、甘いもの苦手だから」
「あ、なるほど」
苦笑とともにカイがそう言うと、闇慈は納得したようにぽんっと扇子を打つ。普通の人にとって程よい甘さでも、そうは思わない人もいるということだ。おそらくソルにとって予想以上の甘さだったのだろう。
困ったような表情でくすっと笑ったカイは、少し収まったらしいソルの背をさすってやった。
「人の楽しみを取るからそういう目に遭うんだぞ?」
「……うるせー」
咳き込んで少しかすれた声が不貞腐れたように文句を言い、一応は回復したのかソルは体を起こす。
「大丈夫か? 口直しにかき氷でも食べる?」
「お前……わざと言ってるだろ」
「あ、バレた?」
ちろっと舌を出して、カイはおどけてみせる。真っ向から勝負を挑めば簡単に返り討ちに遭ってしまうような屈強な男だというのに、甘いもの一つでここまでダメージを受けるなど、面白くないはずがない。からかってみたくもなる。
改めてサイダーを飲んだカイは、その炭酸特有の味を堪能してから、座り直した隣のソルの方に顔を向けた。
「でも、ペプシとかコーラってアメリカの飲み物だろう? 似たようなものだと思うけど」
「ガキの頃に一度飲んだっきりだ」
「あ…そう」
よっぽど甘いものが苦手らしい。
「アメリカ人ってみんなああいう甘いものが好きなのかと思ってた」
「俺もフランス人はみんな酒を水代わりに飲むんだと思ってたがな」
「……悪かったな。どうせ私はお酒に弱いよ」
思わぬ反撃にあって、カイはむぅっとふくれっつらをする。だが、ふと前々からの疑問を思い出して真顔になった。
「そういえば闇慈さん、日本の人はみんな露出狂なんですか?」
「はいッ!?」
「真顔で聞くな、坊や」
「あ痛っ」
カイは横から呆れ顔のソルにぺしっと頭を叩かれた。しかし事実、闇慈と梅喧の格好は露出が高く、カイは本当に勘違いしていた。
闇慈は持っている扇子を開いたり閉じたりしながら、微妙にぎこちない笑みを浮かべた。
「ジャパニーズの服装は本来、ほとんど肌を露出させないものばかりだぜ? 俺はそれをちょっとアレンジしてるだけで……」
「つまりてめぇが変態ってだけのことか」
「なんだ、そうだったんですか」
「待て、違うッ! そこで納得しないでくれ、頼むから!」
闇慈が慌てて縋り付いてきたので、ソルとカイは「じゃあなんなんだ?」と気のない視線を送る。すると、闇慈は堂々と胸を張って言った。
「これは個性ってやつなんだ」
「個性の出しどころが間違ってんじゃねぇか?」
「そうですよ。最初は本当に署まで連れていこうかと思いましたし」
「え。」
「まあ、そうだろうな」
「そうですよ。それが普通の反応です」
二人に交互に責められて撃沈する闇慈。
それでも生来の負けず嫌いで闇慈が立ち直ろうとしたとき――突然、空が明るくなった。
「え……?」
暗闇に覆われた空に大きな明かりで灯り、辺りを光で包んだ。見たこともない光景に、カイは目を見開く。その横で、闇慈が子供のように嬉しそうな顔をして空を見上げた。
「始まったみたいだな。たまや〜!」
闇慈が声をあげるのとほぼ同時に、どんっと爆発音が響き、その光の固まりは空で弾けた。一瞬で辺り一帯が明るく照らされ、真っ暗だったはずの空のキャンバスに、えも言えぬ美しい光の造形が浮かび上がる。
周囲の人々の間からも歓声が上がった。それをどこか遠くに感じながら、カイはひたすらにその色とりどりの光に魅入っていた。今までに全く見たことのない美しい光景が、ひどく衝撃的だった。
(綺麗だ――……)
次々に打ち上げられるそれらを惚けたように見上げ、カイはそう思った。しかし、しばらく見つめた後に闇慈の方へ向いて、真剣な顔で聞いた。
「ところで、これの仕掛け人は誰ですか? 公共の場での危険物を取り扱うのは犯罪ですから、私の職柄上、捕まえないといけないのですが」
「うわッ、違うって! あれはれっきとした日本の伝統で、花火っていうやつなんだ」
「でも、爆弾には違いないでしょう。今すぐ中止するように言ってきます」
「待て、坊や」
闇慈の説明にもほとんど耳を傾けずに花火の打ち上げ場の方へ歩き出したカイは、ソルに後ろから羽交い締めにされた。容易く抑え込まれてしまったことにムッとして、カイは背後のソルを肩越しに睨付け、腕を解こうとギリギリ力を込める。
「放せ、ソル!」
「あれは芸術だ。げーじゅつ。」
「でも! もしかすると取り扱いを間違えるかもしれないだろう!? 事故が起こってからでは遅いんだ……」
今まで扱ったことのある事故を思い返し、カイは俯く。ちょっとした不注意で大きな事故へと繋がった例などいくらでもあった。花火にとても感動しただけに、それで誰か怪我人が出るのは非常に勿体ない。
そう思ってなんとしても中止させようとソルの腕の中で暴れるカイに、闇慈は微笑みながら――だが、真剣な目で言った。
「花火職人は花火を無事に打ち上げるまでが芸術なんだ。最後まで気を抜いたりなんかしないさ。それが職人の誇りだからな」
「……」
闇慈の言葉に、カイは沈黙した。疑うことが彼らにとって侮辱だとしたら、黙る他ない。
カイは深く溜め息をつき、体から力を抜いた。肩越しに振り返ってソルに目で放すように促すと、意味を汲み取ったソルは素直に腕を解いた。
軽くなった体で、カイはしばらく突っ立ったまま、次々上がる花火を眺めた。空がもとの暗さを取り戻しても、すぐにまた明るい光が辺りを支配する。それは繰り返し見ても飽きないものだった。
両隣のソルと闇慈も同じように突っ立ったまま空を見上げていた。
「旧科学技術は……こういうことにも使えるんですね」
視線は花火に留めたままで、不意にカイは呟いた。それを聞き咎めたソルが、僅かにこちらへ顔を向ける。それに気付き、カイもソルの方へ視線を向けた。
「お前は何度もこういうのを見たことがあるんだろう?」
「……ああ」
穏やかに微笑んで聞くカイに、ソルは僅かに間を空けて答えた。おそらく躊躇ったのだろう、聖戦以前の話をして良いのか。
しかし何よりカイ自身、ソルとの隔たりを感じた。自分には知らないことが多すぎる。逆にソルは、カイが知っている事実はすべて知っているだろう。
「綺麗だな」
空に咲く鮮やかな華を見上げながら、カイは少し楽しくて微笑んだ。だって、ソルがいくら色々なことを知っていても、カイにはカイしかできないことがあり、ソルにはソルしかできないことがあるから。結局、誰であろうとそんなに違いはないのだ。やれることをやればいい。
ソルの答えをさほど重くは捉えていないカイに、ソルの方が少し驚いているようだった。表情には出ていないが、雰囲気で分かる。カイは一度目を伏せてから、ソルを正面に捉えた。
「聖戦以前の人達が道を過った理由、分からないこともないよ。本当に綺麗だ」
「坊や」
僅かに語気を強くしたソルの声が、カイの言葉を打ち切るように鋭さを帯びて降ってくる。詳しくは知らないが、ソルが何かしら旧科学技術と因縁があることは分かっているので、それにカイは驚かなかった。代わりに、挑戦状でも叩き付けるような生意気な目付きで、自分の何倍も年上のソルを対等な視線で見つめた。
「でも、私達は再び同じ過ちをしてはいけない。そうだろう?」
技術が悪だとか、ギアが悪だとか。
そういうことではなく、おそらく人間の尽きない欲望そのものが悪なのではないだろうか。加減を知らず、いつかは自滅しかねないというのに、その自覚はあまりに薄い。
そのことを忘れぬように。これから先もその教訓が伝えられるように。
「今は自分にできることをする。それしか方法はないさ」
カイは大袈裟に肩をすくめ、ソルに悪戯っぽく笑いかける。堅い表情をしていたソルは、それを見て少し表情を崩し、カイの頭を無造作に撫で回してきた。
子供扱いに不満はあったが、カイはその手を払わずに最後まで花火を見続けた。傍らにソルがいることを強く感じながら。




祭りの目玉である花火も終わり、そろそろみんなが帰り出す。
日本の文化に触れることが出来て大満足だったカイは、闇慈に深々と頭を下げた。
「本日は本当にありがとうございました。とても楽しかったです」
「楽しんでくれたのならそれ以上に幸いなことはないさ。祭りはまた来年もやるだろうから、時期になったら誘いにいくよ」
「ありがとうございます。この浴衣は後日、洗ってから返しますね」
「うん? 浴衣はそのまま持ってていいよ。来年のためにもな?」
笑顔で浴衣の返却を拒む闇慈にカイは困惑したが、結局はその意見を受け入れた。折角の好意を無にするのは忍びない。
「おら、いつまでしゃべってんだ。早く帰るぞ」
人のことなど全く気にしないソルは言うが早いか、さっさと歩き出していた。もはやいつものことになってしまったが、この男は礼さえできないのだろうか。
「ソル! お前もちゃんと闇慈さんに――痛ッ!」
首根っこ捕まえてでも頭を下げさそうと、先を歩くソルに追いつこうとして、カイは足の痛みに声を上げた。疲労や骨折とは全く別の痛みに、一体なんだとカイがしゃがんで自分の足を診てみると、白い肌に包まれた足の甲の一ヵ所が真っ赤に腫れ上がっている。
「すまねぇ、カイ殿。俺が新しいゲタを貸したりなんかしたから、鼻緒が当たって靴擦れ起こしちゃったみたいだな」
「えっ。闇慈さんのせいじゃありませんよッ。私の歩き方が悪かっただけで……!」
隣にしゃがみこんだ闇慈が気遣うようにカイの足に触れてきたので、カイは顔を赤らめながら闇慈のせいではないのだと首を横に振った。今までに数え切れないほど怪我をしてきたのだからこの程度、大したことはないだろうと思い、カイは立ち上がって無理矢理歩いた。
「っ……!」
しかし結構痛い。もちろん、千切れそうになるような激痛などではないので歩けることは歩ける。ただし、びっこを引いていてかなり格好悪いが。
「カイ殿、そんな無理しなくても……!」
「大丈夫です」
こんな程度で痛がってどうするというのだ。毎日デスクワークで平和ボケでもしたか?
皮一枚が剥がれただけで意外に行動を制限される事実に腹立たしいものを感じながら、カイが二、三歩足を進めると――とても奇妙な場面に遭遇した。
なぜか少し腰を屈めたソルがこちらに背を向けて立っていた。
「背負ってやるからさっさと乗れ」
いつもの不機嫌そうな表情で、ソルはぶっきらぼうに言い放つ。しかしカイはあまりの驚きで表情の抜け落ちた顔で怖々聞いた。
「熱でも、ある?」
「ねぇ」
「じゃあ、別人格が覚醒した?」
「俺は至って正常だ」
「どうしよう、闇慈さん。世界が崩壊するかもしれません」
「っていうか、地球が消滅しちまうんじゃないかい?」
「無差別型リーサルウェポン?」
「だよねぇ」
「お前ら、好き勝手言ってやがるな?(怒)」
こめかみに青筋を浮かべたソルが、ギロリとこちらを睨み据えてきた。それ平然と見つめ返すカイに、ソルは舌打ちしてまたさっさと歩き出す。
「勝手にしろ」
腹立たしげにそう言い捨てて先に行ってしまったソルに、カイは何も言わなかった。
自分の失態で誰かに迷惑をかけるなど、格好悪いことこのうえない。そしてソルには何があっても格好をつけていたい。そう思うから敢えて力は借りない。
カイは何事もなかったように歩き出した。踏み出すごとに擦れて腫れはひどくなるが、それを全く感じさせない歩き方をする。
「カイ殿、大丈夫か?」
「ご心配なく」
微笑んで、カイはそう答えた。
しかししばらくすると、その箇所から血が滲み始めた。流石に歩き方がぎこちなくなってくる。
やわな体に腹立たしいものを感じて険しい顔をしていたカイは、突然こちらを向いて無言で近寄ってくるソルに気付き、驚いた。
「一体どうし――うわぁッ!?」
目の前に来たかと思うと、いきなりカイはソルに抱き上げられて悲鳴をあげた。
大の男を、しかもお姫様だっこで抱えるソルに、カイは目を丸くする。
「な、な、な、何をやってるんだッ!」
「坊やがちんたら遅ぇからだろ」
人ひとりを抱えているとはとても思えない安定した足取りで、ソルは歩く。その表情はどこか不機嫌で、カイは慌てて降りようともがいた。
「降ろせ、ソル! 重いし迷惑かかるから……!」
「別に。坊やが歩けねぇから、俺が歩いてるだけだ」
「え……」
カイは呆然とソルを見つめた。ソルは特に何の表情も浮かべずに前を向いたままだった。
さらりとこの男は、なんてとんでもないことを言うのだろう。
カイにはカイにしかできないこと。ソルにはソルにしかできないこと。
カイが歩けないからソルが歩く。
カイが言いたかったことを理解しているようなソルの言動に、カイは顔を赤らめた。しかしそれは意地でも見れたくなくて、カイはソルの首をぎゅっと掴んで顔を押し付け、表情が見えないようにして負け惜しみの言葉を呟く。
「ムカつくなぁ……ホント、お前はムカつく……」
小声でぶつぶつとそう言うカイに、ソルは微かに笑っただけで何も言わなかった。




余談ではあるが、カイがクジで当てた景品は巨大なテディベアだった。カイはぬいぐるみに特に興味もなかったし、施設に寄付するにしても1個だけだとケンカの原因になりかねないので、カイは三等の小さいぬいぐるみ6個と交換してもらった。
後日、カイは1個を手元に残して5個のぬいぐるみを施設に寄付した。
手元に残したぬいぐるみは、愛想もなく拗ねたような表情の赤い目のウサギで、なんとなく誰かさんにそっくりだったためにカイはそれを手放さなかった。
この事実は……カイだけの秘密である。




END







ラブってるなぁ。マジでこいつらラブってるなぁ(笑)。
自覚症状ない辺りが余計に笑えます。突発で書くとなぜかこうなる……(はぁ〜/ため息)。
時期もズレてしまってむなしいです(泣)。海水浴ネタもあったのになぁ〜…(お蔵入り決定;)。
カイちゃん、マジボケで個人的には楽しかったけど(笑)。


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