「あの…分かり、ました。今、開けます……」

私は扉へと近付き、躊躇いがちに解錠した。結界の類もOFFの状態に切り替える。

「ほ、本当にすみませんでした、ソ……わっ!?」

私が謝ろうとした矢先、開いた扉の向こうから腕が伸びてきて、有無をいわさぬ力で襟を鷲掴まれた。
強い力に引き寄せられ、拒む間もなく、私はソルに唇を奪われる。

「んっ……ぅ」
「いい子だな、坊や。素直が一番だぜ?」

喰らうような激しいキスの合間に、ソルはうっそりと笑い、私の服を性急に剥ぎ始めた。舌が絡み合う、痺れるような快感を伴った口付けに翻弄され、私はそれを阻む術を持たない。
体をまさぐる手が熱く、肌の上を何度も這う度に私はびくりと肩を揺らし、戦きながらも空いた手をソルの背に回した。

「っ…分かった、から…。せめて……ベッドで…」

容易く上がってしまった息を無理に調えて、私はソルの耳元で訴える。このまま床に押し倒されでもしたら、体を痛めてしまうだろう。
しかし、ソルは私の主張を鼻で笑った。

「言っとくが、これは仕置きだぜ? 坊やを気持ちよくするためのもんじゃねぇぞ」
「そんな……、あッ」

絶望的な気分で言葉を紡ごうとした私の下肢に、ソルの無骨な手が触れる。スラックスの上から揉みしだかれ、思わず私は力の抜けそうになる体でソルに縋り付いた。
口腔は器用にうごめくソルの舌に犯され、たくし上げられたシャツから覗く胸の頂は指先で弄り回されるので、下肢はそこへの刺激とも合間って早くも熱を溜め始めている。神経を甘く侵食する快感に私が素直な声を漏らすようになると、ソルは一度私の体から手を退いた。

「ぁ、……なん、で…」
「だからこれは仕置きだっつったろ。……おら、続きがほしいんなら、俺のくわえて勃たせな」

ソルはそう言うとベルトを解き、ファスナーを引き下げて自身を取り出した。幾分か力を持ったそれは、まだ余裕を持っているにも関わらず随分と大きい。
思わず私が赤くなった顔を背けると、ソルはその拒否を許さぬ力で私の頭を下肢へと押しやった。
ひざまづく形になった私は、目の前に突き出されたそれに一度視線を向けると外せなくなる。要求される行為を嫌だとは思っても、体の方は既に火を付けられており、漣のように押し寄せる快感には堪え難く、さらなる刺激を望む。なにより、普段はあまり直視することのないソルのものに興奮を覚えないわけはなく。
カイは躊躇いながらもそれに手を伸ばした。

「やり方は分かるな? ……くれぐれも歯は立てるなよ」
「はい……」

私は顔を赤らめながらも言われるままにそれに口を付けた。
根本を柔らかく握り、先端を舌で擽る。
反応してぴくりと震えたそれに、私は嬉しくなった。気を良くしてそれを口の中に導いて一気に含む。
めいいっぱい頬張っても余るそれは喉を突いて、どうしても吐き気を催すが、それを耐えて私は愛撫に専念した。
しばらくの間、ソルのやり方を思い出して、記憶を辿るように舌を動かし、時折甘噛みするように口を動かしていると、それは質量を増して私の喉を鋭い角度で穿つようになった。口腔を占めるそれに愛撫がままならなくなってきた私の動きに焦れて、ソルが頭を掴んで突き入れてくる。

「んッ、む…っ…!」

息苦しくて、思わず呻いた。唾液とソルの零した蜜が交じり合い、私の口端から滴り落ちる。続けざま数度乱暴に突き入れられ、熱いそれが舌の上を擦っていく感触に、私も抑え切れずに快感で体を震わせた。自分の今の姿は想像するだけでも羞恥に晒されるものだったが、ソルが快感から呼気を荒くしている様が見られるのは嬉しく、触れられてもいないのに私の体を高ぶらせていった。
しばらくして、熱さを伴った溜息を漏らし、ソルはちろりと自らの舌で渇いた唇を嘗めた。

「……もういいぜ、坊や」
「ふ…、ぁ…っ…」

顎を軽く掴まれ、引かれる。
随分と大きく育ったそれから外され、私は生理的に潤んだ眼でソルを見上げた。
暗い闇に満たされた部屋の中で、月のような鮮やかな金に輝く両目がこちらを見据えていた。
思わず息を呑んだ私は、ソルの次の行動を待つ。
何をやるかは分かっているが、何を要求されるかは分からない。それこそ私の知識に全くなく、考えもつかないことかもしれない。
しかし逆らうと余計にひどい目に合わされそうなので大人しく待っていると、ソルは徐に手を伸ばして私を立たせ、片手で荷物のように担ぎ上げた。
肩に担がれた私は驚いて首を巡らせ、ソルの横顔を見つめる。

「ソ、ソル……?」

疑問の視線に答えぬまま、ソルは足を運び、私をベッドの上に放り出した。
衝撃に目を閉じてしまった間にソルが上にのしかかってくる。

「ソル…、なん…で…?」
「あ? 何がだ」
「だって……『仕置き』って言ってたから」

ベッドまで運んでくれるなんて……なんで……?

私の疑問に、ソルは不機嫌そうに鼻を鳴らして答えた。

「一週間はぶっ通しでやるからな。体が痛くてできねぇって言われるのはかなわねぇだけだ」

そう言うと、ソルは貧るように口付け、私の下肢から邪魔な衣類を取り去る。
一週間という言葉を聞いて、私は頭の中で仕事の予定を思い浮かべ、辛うじて可能なことを確認した。
有休が余っているのでそれを当てれば、重大な事件でも起きない限りはソルへの償いに時間を取ることができるだろう。
奥のすぼまりに指を這わせるソルに、私は体を期待と不安に震わせて縋り付いた。

「分かりました…、一週間……付き合います。……本当に、すみませんでした。
ソルの大事なものを駄目にしてしまって……」

指を入れられ、浅く呼吸を繰り返しながら言った私の言葉に、ソルは一瞬眼を細め、緩やかに口端を上げた。

「本当なら値が付かねぇくらいのもんだからな、一ヶ月は付き合えって言いたかったところだが……それで坊やが壊れたら困る。しゃあねぇから、妥協してやるよ」
「ソル……」

本当にごめんなさい……それと、ありがとう。

怒っていながらも私を気遣ってくれているソルに、心から感謝する。
レコードそのものは被害を受けていないが、なくてはならない歌詞カードが台なしになったのだ、普通はこんなものでは済まないだろう。
私だってお気に入りのティーカップのソーサーを割られでもしたら怒り狂うことだろう。カップそのものは無傷でも、やはりソーサーを欠けば芸術品としては欠陥品である。
しかもソルのレコードは二度と手に入らない聖戦前のものなのだから、私のコレクションなどよりも遥かに価値が高いだろう。

「本当にごめ、ん…っ…ソル」
「……もういい。こっちに集中しろ。これを期に色んなことやらせるからな、覚悟しとけ」
「う、ん……。でも…たまには休憩させて、ほし、い……」

じゃないと、死ぬ。

そんなことを本気で心配になって呟くと、ソルは微かに笑って私の首元に顔を埋めた。

「俺にとっちゃ、坊やも大切なもんだからな。……まあ壊すような真似はしねぇよ」

耳に届くか否か、そんな声で呟くと、ソルは私の首筋をきつく吸い上げた。そしてそのまま視線を合わせずにソルは乱暴に体を繋げてきたが、それがこの男の照れ隠しなのだと分かっていた私は、素直に喘ぎを漏らして行為に没頭した。











「……ええ、はい。風邪を引いてしまいまして……はい、なのでこの機会に一週間ほど有休を頂こうかと思うのですが、宜しいでしょうか。……本当にすみません、唐突にこんなことを言い出してしまって。…はい、…ええ分かりました。もしもの時は駆け付けますので……、本当にありがとうございます。こちらは大丈夫ですから……はい、それでは失礼致します」

補佐役のベルナルドへ連絡を終え、私は一息ついて再びベッドに横たわった。窓からは爽やかな朝の光が差し込んでいるが、体は夜の匂いを残して気怠いままだ。
深呼吸をするだけでも腰がピシピシと痛み、散々捏ねくり回された腹部がなんとも言えない不快感を与えるので、思わず私が呻いて身を縮こまらせていると、寝室の扉が開いてソルが姿を現した。

「部下に連絡はし終わったか?」
「ええ……」

喘ぎ続けたせいで掠れてしまった声で私が答えると、ソルは持っていたプレートをサイドテーブルに置き、こちらを覗き込んできた。

「大丈夫か?」
「まあ…、なんとか」

少し心配げな眼差しを向けるソルに、私は微苦笑で答える。はっきり言って、限界まで体力を使い果たしたので大丈夫なわけはない。しかしこれは相応の代償の結果なのだからソルを責めるのはお門違いと言えよう。
長い一週間になりそうだと不安になりつつも、ソルがわざわざ朝食を用意して持ってきてくれたことには素直に喜び、私は微笑んだ。

「これからしばらく、宜しくお願いします」
「ああ、しっかり代価は払ってもらうぜ」

……だが、そのためにはまずメシを食わねぇとな。

そう言って温かな食事が乗せられたプレートを押し進めたソルは、フッと小気味よく笑っていた。








END






たぶん、これでもベストエンド(笑)