「おい坊や! どうしてくれんだよ、こんな時に邪魔しやがって!」
「あなたが勝負してくれないから、いけないんでしょう!?」
俺が叫びながら坊やの長い耳を引っ張ると、
お返しとばかりに坊やが俺の尻尾を掴んだ。
そう。
今、俺達はまともな格好をしていない。
俺が紙袋の医者と対戦してる最中に坊やが乱入してきて
衝撃で零れ落ちた医者の怪しげな薬を
二人で頭から被ってしまったのだ。
命に別状はないが
坊やにはウサギの耳と尻尾が生えた。
そして俺には、情けないことに
黒猫の耳と尻尾が生えてきた。
これでどうやって過ごせというのか。
というか、坊やはともかく俺には思いっっっきり不似合いの格好だ。
「あークソッ。坊やに言っても埒があかねぇ。おい、紙袋! このふざけた格好を元に戻せ!」
「すみませんねぇ〜。それ、試作品なので治す薬がまだないんですよ」
「あぁ!? ざけてんじゃねぇぞコラ!」
「まあ一日も経てばたぶん自然に治ると思いますので。それではまた来週〜ッ!」
「あ! こら待ちなさいっ!」
どこから出したか分からないふざけた傘を広げ、紙袋の医者がさっさと逃げていく。
追いかけたいのは山々だが、なんせ相手はあの奇天烈な医者のことだ。
空間歪曲などお手の物、捕まえるのは至難の業だろう。
一日経って治らなかったときは、ドライン→本気タイランレイヴで半殺しにしてやる。
そう心で決めつつ、こんなややこしい事態にしてくれた坊やを、俺は睨み付けた。
一体どうやって犯してやろうか。
凶悪な目で俺は坊やを見たが、なぜか坊やの方は目を輝かせてこちらを見ていた。
興味津々といった感じで。
一体なんだ?と俺が片眉を上げて顔を顰めると
坊やがにっこり笑って、こう、のたまった。
「ソル。その猫耳、可愛いな」
「いっぺん眼科に行け。」
こういう時の坊やの神経が、俺にはさっぱり理解不能だ……。